前回は、相続とは簡潔に言えば、死亡した人の財産や債務を包括的に引き継ぐことであると説明いたしましたが、相続税はその引き継いだ財産すべてに課税されるわけではありません。
今回は、相続税が課税される財産と非課税となる財産についてみていきたいと思います。
まずは、相続税の対象となる財産について
相続税の対象となる財産は、原則として、被相続人が死亡したときに持っていた財産全てとなります。
相続財産の一例は以下のとおりです。
- ・土地(土地の上に存する権利を含む)
- ・家屋
- ・事業(農業)用財産 … 機械・器具などの減価償却資産、商品・製品、売掛金、未収入金など
- ・有価証券 … 株式、出資金、公債、社債など
- ・現金・預貯金等
- ・家庭用財産
次に、相続税の対象とならない財産について
例外として、財産の性質等、社会的政策目的、国民感情等の見地から課税の対象とすることが適当でないとされる財産があります。これらを非課税財産といいます。
非課税財産の一例は以下のとおりです。
- ・心身障害者共済制度に基づく給付金の受益権
- ・先祖をまつる礼拝の対象となっている物(墓地・墓石・仏壇など)
- ・宗教、慈悲、学術など、公益を目的とする事業を行う人で、 要件を満たす人が取得した公益事業用の財産
- ・相続財産を相続税の申告期限までに、国、地方公共団体、特定の公益法人に寄付した場合の寄付財産
みなし相続財産は相続税の対象となります
また、被相続人が所有している財産以外で、相続財産となるものがあり、これをみなし相続財産と言い、相続税が課せられます。
みなし相続財産として、主なものは以下の通りです。
- ・生命保険金、生命保険契約に関する権利
- ・損害保険金
- ・退職手当金、死亡退職金
- ・功労金、慰労金
- ・定期金に関する権利
- ・相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産
(被相続人の配偶者で、贈与税の配偶者控除を受けている場合は対象外)
ただし、生命保険金は相続税の非課税枠があります。
生命保険は以下の算式の金額分だけ保険金額より控除できます。
500万円 × 法定相続人の数
※生命保険金がみなし相続財産となるのは、被保険者(保険をかけられた人)と保険契約者(保険料の支払者)が被相続人で、保険金受取人が相続人である場合です。
なお、被相続人の債務(借金など)も相続の対象となり、相続税の課税価格の計算上控除されることとなっています。
よって、相続税の課税対象は、
【全ての財産 + みなし相続財産 − 非課税財産 − 債務(借金など)】
となります。
最後に、死亡保険金の課税について
死亡保険金については、保険料負担者、被保険者、保険金受取人の組み合わせによって以下の表のように課税される税の種類が異なります。
保険料の負担者 | 被保険者 | 保険金受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|
B | A | B | 所得税 |
A | A | B | 相続税 |
B | A | C | 贈与税 |
※被保険者Aが死亡したものとする。
一般的には、相続税が課税されるケースが多いのではないでしょうか。
例えば、夫が保険料負担者かつ被保険者で、保険金受取人が妻で、法定相続人が妻および子1人である場合の非課税枠は500万円×2=1,000万円となります。
多額な生命保険金には税金がかかりますのでご注意ください。
課税・非課税の分類は様々
上記のように一口に相続と言っても、課税対象・非課税対象は様々で、ケースバイケースな部分もあります。
間違った解釈で対策を取ってしまわないよう、ぜひ一度税理士に相談する事をオススメします。